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もう一度同じ景色を見たかった。#17.信じるバカ

#17.信じるバカ

 JR川西池田駅、北側。
川西能勢口駅に向かう高架ではなく、旧国道176号線、通称「旧イナロク」を渡って坂を登る。あの日約束した公園は、さらに整備されて、やっぱり周辺の高い建物で景色は狭くなっていた。



 由夏へ

 
 僕の、なんだか面倒臭い提案につきあってくれてありがとう。

 この手紙を読む由夏の横に、喜多晋二郎と言うどうしようもないバカな男がいるはずですが、

 今、改めて申し上げますと、彼はあなたが大好きで、生涯愛することを誓っています。

 いきなりこんな宣言染みた内容の書き始めだと、10年後の由夏は驚くだろうか・・・

 君は今、何を考えていますか。

 昨日の事、今日の事、将来の事、学校の事、仕事の事、友達の事、家族の事、

 戦争とか災害とか世界平和とか、案外近所のカフェの事とか・・・

 僕はそれに加えてもう一つ、誰にも言えない秘密の事。

 君とあの時、あの花火の日に一緒に過ごさなければ、

 あの日きみが僕に声をかけてくれなければ、

 僕はこんなに清々しい気持ちにはなりませんでした。

 ありがとう。

 由夏は「今」、幸せですか?

 単刀直入に聞いてみました。お互いに、28歳・・由夏は3月14日が誕生日なので、27歳。

 どうか幸せであって欲しいと今、心から思います。

 約束の日と場所は、2006年の猪名川花火大会に川西池田の公園にしようと思っています。

 この日だけは、植村達を呼ばないでよ。犯人さん。

 10年後の花火大会の日に約束・・・・覚えてられるかなーーー?!?!

 自分で言い出しておいて、急に不安になった(笑笑)。

 君と過ごす時間が、永遠に続くと信じつつも、

 そんなに上手くはいかないよなとマイナス側に考えてしまうこともよくあります。

 でも、それでも僕は君を好きになって良かったと思っています。

 初めて由夏と見た花火も、一緒に過ごしたクリスマスも、全部が僕にとっては大切な時間で、

 由夏と過ごしたこの時間は、僕のこれからの人生、恋愛、

 いつかできるかもしれない僕の家族にとって、

 すごく大切なものを与えてくれるのだろうと思っていて、

 そのとき、今そこに僕は、君と一緒に居たい。

 1997年3月の喜多晋二郎は、そう考えているのであります。

 うーん、ちゃんと伝わっているだろうか。

 知っていると思うけど、国語は現代文も古典もテストで50点以上を

 取ったことが無いので、伝わらないかもしれないなと。

 うん。

 だから、僕は、君と再会する約束をして、10年後に、

 10年前つまり今のこの気持ちを由夏に伝えようと思う。

 好きだーー!!由夏! 喜多晋二郎は、松村由夏が大好きだぞ!!

 よし、今日の所はこの辺にしといたろ。

 もうすぐお互い大学生になる。

 そしらた、都会にデートに出て少し大人のデートもしてみたい。

 一緒にお酒も飲むんだろうし・・・そしたら由夏はどうなっちゃうんだろう?

 お互いに、まだまだ何も知らない。手紙を書くたびにそう思っていた。

 僕は君を好きなままでいる、そう自分を信じている。自信がある。

 なぜかわからないけど、ありがとう。

 ラグビー、家族、学校、将来の夢・・・・何をおいても由夏、君を大切に思う。

 今、言い切った自分を、10年後に褒めてあげたい。

 今、僕は自分で自分が輝いているのがわかる、というとまるでナルシストだけど、

 そういうことでは無く、君を好きな僕は、君を好きでない僕よりもずっと、輝いている。

 そう感じるんだよ。

 それがすごくうれしくて、毎日が本当に楽しいんだ。

 この気持ちを、10年後の君にも伝えたい。こころからそう思っている。

 だからもう一度会おう、もしも離れ離れになっていたとしても。もう一度だけ。

                          
     1997.3.20 まだ少し寒い春。
           喜多 晋二郎 18歳

 
 Walkmanのイヤホンは、片方の耳だけに。もう片方は、僕の右側でふらふらしているけれど、再生ボタンを押すと、マイケルジャクソンは優しく歌い始めた。

 今がずっと続くとしか考えられない、バカな男子高校生は、どうやら自分がバカかどうかには一切関心がなく、とにかく真っ直ぐに一人の女子高生に恋をしていた。

 阪急川西能勢口駅の交差点。横断歩道を渡ると大阪池田に向かる旧国道176号線

 由夏と何度も歩いた河川敷までの道は、昔よりも車が増えて、商店街のお店は長く開いていないようで、この高架も、こんなオシャレな雑貨屋も、由夏と過ごした時間にはなかった。


 シンジく--ん!
 
 本当は晋二郎君。私は晋二君。植村君もシンジって呼ぶのマジむかつく。

 今私は、未来のあなたにお手紙を書いています。

 そうか。その手があったかと、とても幸せな気分です。

 絶対読んでよ。ぜったいだよ。

 晋二君が付き合ってくれてから、ホンの半年余りだけど、毎日がとても明るいです。

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公園はここからすぐ。

次回、最終回 #18 愉快な未来。
papas-colour.hatenablog.com