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ハピハグラボの歩き方

ディズニー、USJ、釣り、旅行、アスリートを目指す息子とのやり取り・・・・paibariがお届けする役に立つかも知れない情報色々です。

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子供の頃から、好きな事は「作戦会議」でした。

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・もう一度同じ景色を見たかった。
 祖母の死をきっかけに地元に戻ることになったシンジは、高校生の頃の自分を見つめ直すための寄り道をする。兵庫県川西市を走る猪名川と「能勢電」から見える景色のなかで、重大な過去に気付かされることに・・・
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作者のこと

隠しページになります。本当にお暇な方は、探されてください・・・。

もう一度同じ景色を見たかった。#18. 愉快な未来(最終回)

#18 愉快な未来

 右耳だけに付けたWalkmanのイヤホンからPUFFYが流れる頃、猪名川河川敷、花火大会の会場に到着した。

 昨日も来たはずなのに、どうしてもまたここに来なければいけない気がした。

 花柄の封筒には二つ折りになった便箋。約束の日から10年以上遅れても、由夏が待ってくれていたような、そんな自分勝手な感情を申し訳無く思った。



 シンジく--ん!
 
 本当は晋二郎君。私はシンジ君。植村君もシンジって呼ぶのマジむかつく。

 今私は、未来のあなたにお手紙を書いています。

 そうか。その手があったかと、とても幸せな気分です。

 絶対読んでよ。

 シンジ君が付き合ってくれてから、ホンの半年余りだけど、毎日がとても明るいです。

 シンジくんとの思い出はすっごく多い。

 花火大会から始まって、萩原ジャンプ台、ラグビーの試合、

 クリスマスも大晦日も楽しかったけど、私の中の一番は…大雪警報の箕面の大滝!!

 あの日、私の準備した大事な大事なバレンタインチョコは

 お猿さんたちに取られてしまったのだ!・・・ちがうか。

 あの日、大滝までの山道沿いの喫茶店に入ったんだけど、

 とても素敵な香りがして、美味しいティラミスを食べました。

 いつからやってるのかシンジくんが聞くと、店長さんは

 「この前の10月にオープンしたばっかりです。」と言っていました。

 私達と同い年なんだ!!と嬉しくなったのをおぼえています。

 シンジくんも、覚えていますか?

 帰りの電車の中で、なぜか結婚というものについて話になった時、

 「僕達だって、結婚したら喧嘩も増えるのかもしれないよ。」とシンジくんは言いました。

 結婚なんて有り得ない話でしょと言う私に、

 「付き合ってる以上、その可能性はあると思う。」と真剣な目であなたは言いました。

 凄くショックでした。とてもいい意味で。

 理由はよくわかりませんが、胸の奥が熱くなったのを覚えています。


 実は、シンジくんに秘密にしていることがあります。
 
 でも、それはシンジくんだけじゃなくて、植村君や他の皆にも秘密にしてること。


 今、あなたの隣に、私、松村由夏はちゃんと居ますか?

 二人で仲良くしていますか?それともお別れしてしまったけどの再会でしょうか?

 それとも、私はもう、居ないでしょうか?

 何の話?と思うかも知れないけど、ここで長々と何かを説明しても仕方ないので、

 あなたの横にいるかも知れない私に聞いてみて下さい。

 でも安心してください。あなたの横に私が居なくても、

 私はシンジくんを絶対忘れない。なんのこっちゃ??

 あなたに出会う前の私はずっと、教室の窓から外ばかり見ていました。

 自分よりも大きな3年生に突進するも、跳ね返されるシンジくん。

 なんどやっても跳ね飛ばされて、全く歯が立たない。

 なんどやってもなんどやっても全く勝ち目がない事だけがよくわかる。

 なんどもなんども、負けて負けて、でもなんどもなんども、それでもなんども何度も。

 あの人、一体何やってるんだろう?

 1ヵ月、2ヵ月経った頃、跳ね飛ばされない時もあるようになって、

 すこしづつすこしづつ、負けなくなっていた。

 すこしづつ、前へ前へ、すこしづつ、もっと前へ。

 勝負で勝つには一撃必殺のアタックが必要だとばかり思っていた私には、

 心が張り裂ける衝撃でした。

 正直、理解したくなかった。逃げていた自分、病気と戦わない理由ばかり探している自分を。

 真っ直ぐすぎる貴方のラグビーへの想いは、時々私に刺さり過ぎて。

 次第にあなたに夢中な自分が居て、それだけでも十分、私にはとても素晴らしい事でした。

 でも、あの花火大会の日、あなたは「別に良いけど。」と言ってくれた。

 ほんとにびっくりして倒れそうになったんだけど、

 あなたへの告白を相談した植村君が先に倒れちゃって…あ、ついにバレちゃったかな。

 あなたと過ごす時間は、私にとって、私が生きている事を強く感じられる、

 とてもとても大切な時間。

 神様、どうかこの大切な時間を私から取り上げないでください。

 お願いします。お願いします。お願いします。

 とても大切な人、大好きな人、応援したい人、勇気づけられる人、

 音楽の好きな人、仲間を大事にする人、優しい人、騙されやすい人、

 嘘の下手な人、真剣に私を好きになってくれた人。

 どうか、私にこの人と一緒にいる権利を下さい!



 「10年後のお互いに向けて手紙を書こう。」河川敷を散歩している時に、

 急に真剣な顔のシンジくんは言いました。ずっと一緒に居たいからだとさ。

 もう、どうしたら良いのでしょう?

 とても嬉しくて、嬉しくて嬉しくて、嬉しくて。


 どうしたらそこまで、2006年の、その先のあなたのところまで行けるでしょうか?

 あなたに会いたい。会い続けたい。

 せめて、あなたの思いに乗って、私も、せめて私の思いだけは、

 とどけ!!未来のシンジくんへ!!

 私は、そこでもう一度喜多晋二郎に会えたら、その手紙を一緒に読むことが出来たら、

 今のこの、18歳の松村由夏の気持ちを10年分聞かせてあげるつもり。


 なんだが少し、思いこんでしまったけど、これからも宜しくね。

 シンジくん。未来でもまた会いましょう。

                            
      1997.3.21 雨降っちゃった。
      あ、あの花火大会の時の約束、
         一緒に入れておきます。
        松村 由夏 素敵な女子高生

 封筒の底には、100円玉が1枚、10円玉が5枚、そして1円玉が3枚入っていた。

 由香は精一杯の思いでこの手紙を届けてくれた。

 嬉しさとか、悲しさとか、色んなものが混ざった、経験したことのない感情だった。

 高速道路が出来たとはいえ、河川敷の空は広くて。

 工場の煙突はその高速道路よりも高い所から煙を吐いていた。

 JR福知山線、登り電車が行き過ぎたとき、Walkmanは最後の「メロディ」を演奏し終えた。

 カセットテープに録音した音楽は、曲が終わってもまだ録音作業が続いている間は
 
 うっすらと音がして、そして、そのうっすらとした音もプツと切れる。




 「シンジくん…」

 「??ん」 

 「シンジくん、聞こえますか?」

 玉置浩二さんの演奏の後。もう一度録音が開始される音が聞こえて、

 それからほどなく、かすれてゆっくりな、とても弱々しい声が聞こえた。

 「これを聞いてくれてるってことは、手紙、読んだってことかな?……ごめんね。私、約束の場所には行けないみたい。この前は、急に訳わかんないこと言って、一方的にお別れしちゃって。」

 「…」

 「怒ってないの?優しいなあ、シンジくんは。」

 「こんなの、録音してなかったじゃないか…」

 「シンジくんと、2回目の花火大会を見るはずだったあの日、私の病気はとても重たくなってしまって、とうとう支えきれなくなってしまいました。これをあなたに言うと、あなたは何を置いても優先してしまう気がしたから、あなたにはあなたの人生を生きてほしくて、とても悲しいけど、私はあなたには嫌われて、そして消えてしまうことにしました。」
 
 「・・・・・消えないよ・・・・」

 「だから、せめてあなたとの思い出の一つ、萩原ジャンプ台の前で、残り少ないかも知れない毎日を過ごすことにしたの。お母さんも、家の近くでお好み焼き屋さんをすることにしてくれました。でも、引っ越してきて、すぐにジャンプ台の舗装が始まってしまって、とても悲しくて。そしたら、急に不安になったの。一緒に埋めた、未来への手紙のこと。案の定、公園の藤棚の裏が工事中だったから、工事現場のオジサンに訳を話して(笑)。私、シンジくんと埋めた缶缶、知らないオジサンと掘り出したの。面白くない??」

 「なんだそりゃ。でもありがとう。」

「今は・・・、うん、病院です。この前お母さんが先生と話してて、多分泣いてたのかな。わかっちゃうもんだね、色んな事。それから、親戚の人とか色んな人がお見舞いに来るようになった。その内にお母さんがシンジくんを呼んじゃうんじゃないかと思ったから、全部話しておきました。入院してる私も見たかったかな?ごめんね。」

 「謝んないでよ・・・・」

 「後悔が無いと言えば嘘になるけど、とても素敵な人生になりました。ありがとうシンジくん。あなたとの思い出があるだけで、私の心は、軽く、暖かくなります。花火大会、河川敷、雲雀丘の山の上、箕面の大滝、萩原ジャンプ台…出来れば、出来れば……出来れば、あなたと、大好きなあなたと、もう一度同じ景色を見たかった…」

「どうかこの思いが未来に届きますように。1997年も、2006年も、その先もずっと喜多晋二郎を大好きな、松村由夏より」


 ジャンボジェットからの景色なら、高速道路が一本通っただけの、誰も気づかない変化なのかもしれない。

 でも、たった一本の高速道路が通る間に、誰かが産まれて、家族ができて、出会って別れて、泣いて笑って。

 同じ形を二度とは作らない花火のように、それぞれがその一瞬を、必死に生きている。

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